英語がわかったゴリラが日本の英語教育を変えていく。

―偏差値30台の男がTOEIC満点へ、そして英語学校を作るまで―

 

 

第1話

空手家、ときどき、大学生。

 

 

伊勢嶋という男を語るためには、まずはその大学時代から始めなければならない。

 

大学入学のため上京してきたばかりの伊勢嶋は、希望に胸を膨らませ、
学生時代のほとんどを過ごすことになるその場所の前に立っていた。

 

男、伊勢嶋剛、このとき21歳。何か間違っているのはその年齢ではない。
この男が立っているその場所が、これから通う大学ではなく、厚木のとある空手道場の前だということである。

 

大学に入ったら何を勉強するかなど考えたこともなかった。
ただ、いつか東京に行って、テレビの深夜番組で知ったある師範の空手道場に入門する、
そのことだけはずっと以前から決めていたのだ。

 

 

こうして始めた空手であったが、このときはもちろん、「俺は空手で食っていくんだ」とか、それほど強い覚悟があって始めたわけではない。

伊勢嶋にとって、空手はただ憧れの対象だった。

そして、憧れの女性と付き合ってみてその本当の姿に愕然とする、
例えるならばそんな日々が伊勢嶋を待っているなどとは、このときは知るはずもなかった。

 

意気揚々と稽古のため道場にやってきた伊勢嶋だが、最初のスパーリングで、その憧れは早々と打ち砕かれることになる。

 

見ているぶんには何でもないローキックが、
いざ自分が受けてみると、それはもう、痛いのだ。

 

あぁ、悶絶という言葉はこういうときのためにあったのかと、薄れそうな意識のなかで考えていた。
「やっぱり道場やめようかな」と、少しの迷いが生じた瞬間だった。

 

だったらもう、すみっこで平和にサンドバッグでも蹴っていようと、足を向けた伊勢嶋だが、
この道場には安らぎの場などなかった。

足の爪が剥がれて飛んだあとも、顔色ひとつ変えずにサンドバッグを蹴り続ける先輩の姿を見たとき、
「道場やめなきゃ俺は大変なことになる」と、迷いはいよいよ、確信に変わろうとしていた。

 

 

その翌日。なぜか伊勢嶋は、気がつけばまた、道場に立っていた。

負けず嫌いでもあるし、あきらめが悪いとも言えるのだろう。

やると決めた以上は、退くわけにいかない。
空手を始める前から、この男には人一倍、根性だけは備わっていた。

 

ただ続けていけば、何かが変わるかもしれない、そんな気持ちもどこかにはあったのだろうか。

無謀にも選手育成コースを選択した結果、水曜日には毎週、地獄が待っていた。
それでも折れることなく、伊勢嶋は道場に通い続けた。
友人たちが合コンや飲み会で青春を謳歌する傍らで、打ちのめされ蹴落とされる日々を送り続けたのである。

 

 

しかし、不思議なもので、毎日のように道場に通っていると、そんな地獄もごくありふれた日常になってしまうものである。

もちろん、まともな一般人の感覚からは想像しがたいのだが、そこは伊勢嶋の規格外なところなのだ。

そしていつの間にか、何が目的なのかもよくわからないまま、空手をやっている自分に満足しているだけの日々を繰り返すようになっていた。

 

 

そんなある日。ついに伊勢嶋が選手として初めての試合に臨むときがやってきた。

学生選手権、舞台として不足なし、実力を見せつける絶好の機会だ、そう伊勢嶋は考えていた。

 

毎日道場に来て、苦しい稽古をこなしている自分が負けるはずがない。

これは初出場初優勝、「空手界に脅威の新人現る!」とか言われちゃうかな、ヒーローインタビューでどんなこと話そうかな、次の日から女の子にモテまくりじゃないか、どうやってデートの誘い断ろうかな・・・。

 

もはや妄想は尽きることがなかった。

 

 

そして、伊勢嶋は初めての試合の日を迎えた。

 

 

つづく

 

英ゴリラの成り上がりストーリー

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偏差値30〜TOEIC満点までの快進撃をエピソード形式で紹介。

次の英語マスターになるのは君だ!